八月の俳句

八月の赤子はいまも宙を蹴る 宇多喜代子

八月がくるうつせみうつしみ 寺井谷子

象の背を箒で掃いて終戦日 大木あまり

どの家も道につながり盆の村 小泉啄葉

南から骨の開いた傘が来る 鴇田智哉

ゆつくりと西より雨や絵燈籠 宇佐美魚目

岐阜提燈瀬音の中に点りけり 辻恵美子

夕風へ背襖二枚門火焚く 奈良文夫

草色の大きな月や送り盆 中山世一

ひぐらしや遠い世界に泉湧く 宇井十間

蜩や山のプールに杉の影 森潮

口吸へば魚臭きや昼花火 間村俊一

桃食ひしあと吹く風に身をまかす 村越化石

髪白くなるうつそみや星の恋 藺草慶子