七月の俳句

やはらかく胸を打ちたる団扇かな 片山由美子

一瞬にしてみな遺品雲の峰 櫂未知子

老の肘さむくてならぬ夏の雨 辻田克巳

ばつてらや川筋は灯のなつかしく 山尾玉藻

手に取りて木曽の檜の椀涼し 稲畑廣太郎

カバのデカ死んで日本の油照 坪内稔典

日盛や動物園は死を見せず 高柳克弘

少年の雨の匂ひやかぶと虫 石寒太

晩年や夜空より散るさるすべり 鍵和田秞子

かなぶんに好かれて女盛り越す 岸本マチ子

ハンモックより過ちのごとく足 仲寒蝉

炎天のビールケースにバット挿す 榮猿丸

テーブルに七味散りをりかき氷 小野あらた

学会の夜のホテルに泳ぎけり 杉田菜穂